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最高裁判所第二小法廷 昭和30年(あ)2205号 決定

本籍

大阪市西淀川区御幣島町東一丁目六番地

住居

同市同区千舟東一丁目一六番地

機械商

今川紀代治

明治三七年九月一日生

右詐欺被告事件について昭和三〇年五月三〇日大阪高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人佐伯千仭、同黒坂一男の上告趣意第一点論旨の、売買の目的物たる二千屯に不足する部分の代金に付ては詐欺罪は成立しないとの主張は、原審で主張判断してない事項であるから上告の適法とならない(なお原審の認容する第一審判決の認定事実は、被告人は本件スクラツプの数量を詐わり二千屯あるものとして一括売却し、結局西尾に対し、売買物件が巨大なため検量不能又は困難であることを理由に検量をやめて二千屯として取引するよう申し向け、同人をしてこれを承諾させて、その代金支払のため手形及小切手を交付させ、これを騙取したというのであつて、その売買は二千屯のスクラツプあるものとして不可分的に行われ代金支払のために交付された三通の手形及び小切手の各通も、売買物件の一部に対応するものでないことは判文の全趣旨から肯認することができる。従つてその交付を受けた手形及び小切手の全部につき詐欺罪の成立を認めた原判決は正当である。論旨引用の判例は本件と事案を異にし本件に適切でない)又第二点は事実誤認、理由そご、量刑不当の主張を出でず刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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